2015年度 秋の研究大会 短信

→短信:報告と写真を掲載しました [2016/02/26]

概要

EMCA研究会2015年度研究大会を下記のとおり開催いたします。第二部では、翻訳書『診療場面のコミュニケーション:会話分析からわかること』が出版されたばかりの、ジョン・ヘリテージ先生およびダグラス・メイナード先生に、ご講演いただきます。多くのみなさまのご参加をお待ちしております。

(大会担当世話人:前田泰樹・黒嶋智美)

日時 10月24日(土)10:00-17:00
場所 東海大学高輪キャンパス 4201・4202教室[地図]
大会参加費 無料(会員・非会員とも)

プログラム

10:00 受付開始
10:30-12:00 第一部:自由報告
10:30-11:00 鈴木雅博(大同大学)
教師間相互行為における成員カテゴリーの諸相[→概要
11:00-11:30 三部光太郎(千葉大学大学院)
クライアントの応答を組み換える―キャリア形成支援カウンセリングにおける、意志、動機、責任の帰属実践についての会話分析[→概要
11:30-12:00 海老田大五朗(新潟青陵大学)
T学園/C社の組織デザインと商品開発 [→概要
12:00-13:30 昼食
13:30-14:00 総会
14:00-17:00 第二部:特別講演(講演は英語で行われます)
14:00-14:05 主旨説明:司会 黒嶋智美(千葉大学)
14:05-14:50 John Heritage(University of California, Los Angeles)Are explicit apologies proportional to the offenses they address? [→概要
14:50-14:55 指定討論:串田秀也(大阪教育大学)
14:55-15:05 リプライおよび質疑応答
15:05-15:10 休憩(5分)
15:10-15:55 Doug Maynard(University of Wisconsin-Madison)Directing & assessing children during Autism diagnosis: An EMCA perspective[→概要
15:55-16:00 指定討論:浦野 茂(三重県立看護大学)
16:00-16:10 リプライおよび質疑応答
16:10-16:15 休憩(5分)
16:15-17:00 全体討論
17:00 閉会

講演概要

Are explicit apologies proportional to the offenses they address? John Heritage University of California, Los Angeles, USA

In this paper, we consider Goffman’s proposal of proportionality between virtual offenses and remedial actions, based on the examination of 102 cases of explicit apologies. To this end, we offer a typology of the primary apology formats within the dataset, together with a broad categorization of the types of virtual offenses to which these apologies are addressed. We find a broad proportionality between apologies and the offenses they remediate when the offenses to be remediated are minor, however this relationship is not sustained among larger apologies and offenses. In the latter cases, relational and contextual contingencies are important intervening factors influencing apology construction.


Directing & assessing children during Autism diagnosis: An EMCA perspective Doug Maynard University of Wisconsin-Madison, USA

This presentation is labeled “notes” because it is an outline of research in progress. This project, funded by the U.S. National Science Foundation, involves field research entitled, “The Sociology of Testing and Diagnosis for Autism Spectrum Disorder (ASD).” From this project, I aim to identify three phenomena. First, I show the relationship between ASD and the avenue it carves into the ethnomethodological world of everyday practices. Original definitions of autism in the work of Kanner (1943) and Asperger (1944) basically describe breaches of commonsense order, and thereby suggest how ASD may give access to what commonsense consists of. Second, in clinical testing, breaches of commonsense often show up as violations of “directive-response” sequences. After being asked for a particular answer or performance, the child appears to be willfully noncompliant. Third, clinicians make sense of such conduct by depicting the agency of a child separate from the interactional contexts in which violations occur. Clinical sense making also includes “anecdotal optimism,” which is putting a positive twist on the child’s otherwise violative behavior. Once again, commonsense works toward providing for the appearance of a benign social world. To demonstrate the robustness of these phenomena, I will show two examples from different eras in the diagnosis of autism.

自由報告発表概要

教師間相互行為における成員カテゴリーの諸相 鈴木雅博(大同大学)

本発表は,教師が相互行為のなかで種々の成員カテゴリーへと自他を定式化しながら,成員カテゴリーに関連する諸規範を参照することで自らの仕事の有り様を規定していくワークを記述することを目的とする。調査は2009年から2年間にわたり公立中学校において実施されたものであり,本発表では,下校時刻の繰上げをめぐる運営委員会での議論を対象とする。記録はフィールドノーツによるものである。運営委員会は職員会議への提出原案を先議する場であり,管理職のほか学年主任・校務分掌部長等が参加する。ここでの議論は,条例改正による勤務時間短縮にともなって下校時刻の繰上げが提案されたことを契機としている。原案は繰上げ期間を一部に限定していたため,より一層の繰上げを求める者と原案を擁護する者との間で論争となった。そこでは,教師たちが〈労働〉/〈教育〉/〈リスク〉といった各カテゴリー集合を枠組みとして論じることで,また,各カテゴリー集合に付随する諸規範を参照することで,原案の擁護/対抗を成し遂げていた。本発表ではこのワークを対象とした検討を行う。

クライアントの応答を組み換える―キャリア形成支援カウンセリングにおける、意志、動機、責任の帰属実践についての会話分析 三部光太郎(千葉大学大学院)

本報告が取り上げる活動は、ハローワークや各種学校、企業や就労支援を行うNPOなどで行われている、キャリア形成を支援する相談活動(キャリア・カウンセリング)である。相談活動の序盤において、カウンセラーはクライアントの過去や現在、将来の展望についての情報を収集する活動に従事する。その過程は基本的に、「カウンセラーによる質問‐クライアントによる応答」という行為連鎖として進行するが、時としてカウンセラーは、クライアントの応答の直後(あるいは最中)に、それまでのクライアントの応答の発話を、言葉の付け足し、削除、置き換えなどを行いながら繰り返し、クライアントに対して確認を求める。本報告が明らかにするのは、そうした確認質問を通じて、カウンセラーがクライアントに意志や動機、責任などを帰属(しようと)する実践の編成である。報告当日は、個別事例の分析をいくつか示したうえで、報告の後半において、どのような仕方で個別事例の分析を相互に関連付けるべきかについて、検討を行うことを予定している。

T学園/C社の組織デザインと商品開発 海老田大五朗(新潟青陵大学)

障害のおもさを総合的に判断する基準の一つに、「就労の可否」がある。つまり、「働くことができる」障害者は軽度、「働くことができない」障害者は重度と分類されうる。したがって、一般に重度障害者を受け入れる生活介護施設/施設入所支援では、軽作業などの訓練がなされることはあるが、その軽作業が経済的な見返りをもたらすことはない。しかしながら、作業訓練として農業を取り入れ、山の斜面で葡萄をつくり、その葡萄でワインをつくる会社を立ち上げ、そこで作られたワインの売り上げで、重度障害者を受け入れる生活介護施設/施設入所支援施設に一般企業が支払う、給与でもなければ就労支援施設が支払う工賃でもない、「作業収益の分配」として分配金をもたらす仕組みをつくった組織がある。しかもその組織は30年以上も継続している。本報告の目的は、そのような仕組みを持つ、T学園/C社がどのように組織されているかを明らかにすることである。そして、組織運営の継続の鍵となる、商品としてのワインの商品開発やその歴史について、当時の経営者や技術開発に携わったアドバイザーの証言をもとに再構成することを目的とする。

お問い合わせ

  • この案内に関する問い合わせ先: 前田泰樹
  • 入会手続き等,EMCA研に関する問い合わせ先:エスノメソドロジー・会話分析研究会 事務局(EMCA研事務局)