2014年度 春の研究例会 短信

→短信:報告と写真を掲載しました [2016/02/19]

概要

EMCA研究会2014年度研究例会のプログラムをお送りいたします。本年は樫村志郎先生先生(神戸大学)にご講演いただきます。また、書評セッション、自由報告を企画しております。多くのみなさまのご参加をお待ちしております。

大会担当世話人:平本毅、秋谷直矩(最終更新: 2015年2月13日)

日時: 2015年3月8日(日)9:30-17:45
場所: 立命館大学梅田キャンパス(大阪富国生命ビル)14階多目的室・演習室2 [キャンパスマップ
大会参加費: 無料(会員・非会員とも)
事前参加申込: 不要

プログラム

9:30 受付開始
09:30-12:25 第一部:書評セッション(多目的室)

09:30-10:25 山本真理(早稲田大学)「物語の受け手によるセリフ発話:物語の相互行為的展開」書評者:黒嶋智美(日本学術振興会)須賀あゆみ(奈良女子大学)
10:30-11:25 池上賢(立教大学)「メディア経験とオーディエンス・アイデンティティ:語り・パフォーマンス・エスノメソドロジー」書評者:岡田光弘(国際基督教大学)南保輔(成城大学)
11:30-12:25 池上賢(立教大学)「メディア経験とオーディエンス・アイデンティティ:語り・パフォーマンス・エスノメソドロジー」書評者:岡田光弘(国際基督教大学)南保輔(成城大学)
12:30-14:00 昼食
14:00-16:30 第二部:自由報告(多目的室)

14:00-14:45 荒野侑甫(ニューカッスル大学)「第一言語話者と第二言語話者による相互行為における協力的方法」[→要旨
14:45-15:30 重吉知美(短歌結社水甕)・是永論(立教大学)「短歌の歌会における「批評」の実践」 [→要旨
15:30-16:15 梅村弥生(筑波大学)「2つのドキュメントを繋げる会話─蘇州日系プラスチック工場における日本人社員と中国人社員との会話から─」 [→要旨
16:15-16:25 休憩
16:25-17:45 第三部:講演(多目的室)

16:20-17:05 樫村志郎先生(神戸大学)「「相互反映性の原則」の学説的起源 ─1920年~40年代の質的方法論とエスノメソドロジーの原構想─」[→要旨
17:05-17:20 指定討論者:中村和生(青森大学)
17:20-17:45 総合討論
17:45 閉会

講演

「「相互反映性の原則」の学説的起源 ─1920年~40年代の質的方法論とエスノメソドロジーの原構想─」樫村志郎(神戸大学)

Garfinkel の『エスノメソドロジー研究』(1967年、viiページ)によれば、エスノメソドロジーのプログラムは、メンバーの方法論に着目することで、日常的活動とその説明可能性の間の「相互反映性」を観察し検討可能にすることを通じて、社会的活動の組織を研究するものと主張される。メンバーの方法はその日常的活動の様相であるとともに、その同一の活動を説明可能にするものであるから、「相互反映性」の現象とは、日常的活動とその説明可能性の間に同一性があることである。この主張──「相互反映性の原則」とよぶ──は、この同一性がメンバーの諸方法の行使の達成として見て取られ、検討され、研究されることができるという主張である。いわゆる「ドキュメンタリー解釈法」や「会話の展開と発話の解釈」や「陪審員の方法」等の事例は、メンバーの諸方法の行使の達成として分析された相互反映性の現象の例である。だが、その方法論的基礎-とくにそれがどのような方法論的意義や学説史的由来をもつものか-はなお十分に明らかになっていない。本報告では、「相互反映性の原則」が「エスノメソドロジー以前」の Garfinkel によるアメリカ社会学の批判的理解から生み出されたという一般的な考え方を示唆したい。とくに Thomas と Znaniecki の『ヨーロッパとアメリカにおけるポーランド農民』(1918-20) と Garfinkel の初期研究、および Mannheim の「世界観の解釈について」(1923=1952)の方法論を検討することを通じ、その構想が、他の源泉-とりわけ重要なのは、Schutz と Gurwitsch の現象学、Burke と Parsons の行為理論-とともに、1920年代から40年代における「行為者の視点」または「状況の定義」の尊重という主観主義的社会学方法論に由来するという解釈を提示する。

なお、本報告は、2014年5月、2014年10月、2014年11月に行った報告をもとにしている。これらの報告原稿およびスライドのいくつかはつぎのURLで入手できる。

自由報告発表概要

(1)第一言語話者と第二言語話者による相互行為における協力的方法 荒野侑甫(ニューカッスル大学)

本発表では、高等教育における英語の第一言語話者と第二言語話者による相互行為(L2相互行為)、複数人による会話、制度的会話への理解をこれまでより深めることを目的とし、学生同士によるグループ・ミーティング──とくに外国語教育の教室以外における言語活動の実践──を会話分析の観点から観察・分析する。本発表の目的を遂行させるために、まず (1)その場面による会話参加者による相互理解を保つためのユニークな方法について探求する。ここでは、参与者同士が行う協力的なシークエンスの例、とくに特異的な修復、コール・アンド・レスポンスなどをいくつか提示する。次いで本研究の観察・分析の結果を (2) 先行研究などと比較し議論を展開したい。そこでは (3) まず学生同士によるミーティングの「制度的」な要素について触れ、(4) 次いで分析にて明らかになった協力的な方法について考察する。なお、本発表で使用するデータは、2013年から2014年までにイングランドの国立大学のコンピュータ・サイエンスの授業のグループ・ミーティング(学部および修士)の様子をビデオで録画したものである。

(2)「自短歌の歌会における「批評」の実践」重吉知美(短歌結社水甕)・是永論(立教大学)

短歌の創作者はグループとして「歌会」を催す。参加者は自作の短歌を持ち寄り、相互に批評を行う。歌会で「優れた歌人の批評を聞いたり、彼らの実作の現場に立ち会ったりする体験」(穂村 2000)は短歌創作にとって重要とされている。

本研究はエスノメソドロジーの視点から、あるグループの歌会における相互行為の中で「批評」が組織化される実践の分析を行う。分析においては、参加者が他者の作品について質問や対話を通じて解釈を行い、言葉の選択について改善点を述べるといった相互行為上の実践を通じて「批評」をどのように構成しているのかが焦点となる。さらに、多くの場合、作者自身の体験が短歌のモチーフとなっている点から、人々が「経験に対する資格」(Sacks 1992)をどのように参照しながら、作品そのものを理解可能なものとしているのかという点にも注目する。

以上の分析を通じて、観察された歌会において特有の批評の場が構成される過程があることとともに、その体験を通じて参加者が作歌の技術を向上させていることを、分析者自身による歌人としてのエスノグラフィーを踏まえて確認する。

(3)「2つのドキュメントを繋げる会話─蘇州日系プラスチック工場における日本人社員と中国人社員との会話から─」梅村弥生(筑波大学)

本研究の目的は、職場の情報交換における社員同士の相互行為を詳細に記述することである。とりわけ、社員らの手元にあるドキュメントを「見る」行為と、ドキュメントに記載されていない情報の開示がどのように進行し、発話にどのように埋め込まれているかという問いに焦点を当てる。

本研究のフィールドは、中国蘇州にある日系のプラスチック部品製造工場である。日本人社員 A は、プラスチック部品の金型の製造と修理を受け持つ技術部の社員である。一方、現地社員 B は、社内の全ての金型修理を管理する部署の課長である。A は自分が作成したドキュメントの金型修理以降の情報覧(試作中・大量生産中・保留中など)を埋めるために、B に質問する。しかし、修理に関わる全ての履歴が記載されたドキュメントが B の手元に無いため、B は情報の記憶を辿りながら答える。2人の会話には、2つのドキュメントを統合する行為が埋め込まれている。会話の途中で、双方の行為のすれ違いが観察され、AB間の質疑応答が不自然に引き延ばされる。しかし、社員Bが修復を開始し解決に至る。

お問い合わせ

  • この案内に関する問い合わせは、秋谷()まで
  • 研究例会に関する問い合わせは、EMCA研世話人(エスノメソドロジー・会話分析研究会 世話人)まで
  • 入会手続き等、EMCA研に関する問い合わせは、EMCA研事務局(エスノメソドロジー・会話分析研究会 事務局)まで