2020年度 秋の研究大会 短信

概要

2020年11月14日(土)に、以下の通り、2020年度EMCA研究会秋の研究大会をオンラインで開催します。2019年度は、秋の研究大会に続き、春の例会も延期となりましたので、今度こそ確実に開催したいと考え、オンラインで行うことになりました。
午前は自由報告です。報告と報告の間の時間を長めにとりました。Zoomを開いておきますので、自由に質疑応答と討論ができるようになっています。午後は総会と、シンポジウム「ジェンダー研究とEMCA」です。
みなさん、ふるってご参加ください。お待ちしております。

(大会担当世話人:松永伸太朗・池谷のぞみ)

日時 2020年11月14日(土)10:00-16:35
場所 ZOOMによるオンライン開催
大会参加費 無料(会員・非会員とも)
事前参加申込 事前の参加登録が必要となります。11月6日(金)までにお申し込みください。
以下のURLから申し込みをされますと、当日の情報がお申し込みのアドレスに送信されます。<ご参加登録先>
https://keio-univ.zoom.us/meeting/register/tZcvfu-tpj0qH9PGYwPGzzjfPpbANCEat9ko
参加登録された際の氏名が当日表示されます。

プログラム

9:30 受付開始
10:00-12:30
  • 10:00 開会の辞
  • 第1部 自由報告
    • 10:05-10:35      松永伸太朗氏(長野大学)・布川由利氏(高崎健康福祉大学/東京大学)「社会調査インタビューのEMCA研究の展開:1990年代以降の文献レビューから」[→要旨
    • 11:00-11:30     岡田光弘氏(国際基督教大学)「『三人称の現象学』としてのエスノメソドロジー研究」[→要旨
    • 12:00-12:30     樫田美雄氏(神戸市看護大学)「在宅療養者のブリコラージュとしての手拍子:音楽療法のビデオ・エスノグラフィー」[→要旨
12:30-13:30 昼食
13:30-13:45 総会
14:00-16:30
  • シンポジウム「ジェンダー研究とEMCA研究」
    • 14:00-14:05     趣旨説明
    • 14:10-14:40     鶴田幸恵氏(千葉大学)「日本におけるトランスジェンダーとフェミニズム:トランスジェンダー活動家の語りから(仮)」
    • 14:45-15:15     小宮友根氏(東北学院大学)
    • 「フェミニストEMCA、フェミニズムのEMCA」
    • <休憩>
    • 15:20-15:50     講評:加藤秀一氏(明治学院大学)・池谷のぞみ氏(慶應義塾大学)
    • 15:50-16:30     リプライ/総合討論
16:30 閉会の辞

自由報告概要

1. 「社会調査インタビューのEMCA研究の展開:1990年代以降の文献レビューから」松永伸太朗氏(長野大学)・布川由利氏(高崎健康福祉大学/東京大学)

本報告では、社会調査の一環として行われるインタビューに関するEMCA研究のレビューを行い、その意義と今後の展開可能性について議論する。調査インタビューに対しては、それが自然に生起した会話ではないという考えから、かつてEMCA研究の中で積極的に取り上げあげられてこなかったという経緯がある。しかし近年、インタビューが制度的会話の一つあることに着目し、その相互行為的な組織や特徴を捉えようとするEMCA研究が蓄積しつつある。こうした動向は、調査インタビューの批判的検討を経て、インタビューとEMCA研究の関係性が徐々に変化してきたことを意味している。本発表では、こうした動向を牽引しているキャスリン・ロールストンの2006年と2019年におけるレビュー論文を手がかりとしつつ、そこで紹介されている個別の文献も検討する。そこから、①インタビューのやりとりを相互行為として捉える、②whatの問い(内容)とhowの問い(形式)を分けないというEMCA研究においては基本的な方針が確認されながら、会話分析や成員カテゴリー化分析などの個別トピックに向かって展開が再整理しつつあることを示す。こうした整理を行ったうえで、インタビューの社会調査としての性質を捉えるうえで、インタビューの場それ自体に関わっている複数の記述をいかに取り扱うかという課題が今後重要となってくるように思われることを議論する。

2. 「『三人称の現象学』としてのエスノメソドロジー研究」岡田光弘氏(国際基督教大学)

かつて、エスノメソドロジー研究を「人びとの実践に学ぶ」というフレーズで定式化したことがある[前田ら2007]。エスノメソドロジー研究が「実践学」であるということは、人々の実際の振る舞いに学ぶことで、社会学は、自らの理論的な問題を解くことができ、それを人々の実践に返すことができるということである。
このタイプの研究を『三人称の現象学(third person phenomenology)』と呼ぶことができる。三人称的な日常言語に媒介されて、組織され、達成された「経験内容」を扱う研究である。「私」という経験を生み出す「観察」や「記述」の「方法」が「私」(の経験)に先行するということである。また、三人称の現象学が扱う世界には、まず、すでに、規範性、社会性を帯びた、デュルケムのモノが存在している。それは、いわゆる、「素朴実在論」の世界であり、周りの誰でもが、いつでも経験している社会(世界)である。場面が、人びとに先んじており、その中に投げ込まれた人びとは、何か理由があって、その他の方法を用いることが要求されていない限り、自分たちは行為の意味を、いま行なっている行為の中で「観察」することができるはずだと想定している。これは、「人々の問題を解く」ことで、その成果を現場に接合可能な(ビデオ・)エスノグラフィーが目指す方向性とも一致している。

3. 「在宅療養者のブリコラージュとしての手拍子:音楽療法のビデオ・エスノグラフィー」樫田美雄氏(神戸市看護大学)

発声が困難になっている在宅療養者に音楽療法が提供されている場面を報告する。歌えない療養者は、手拍子によって場面に参与していた。当該場面内には、音楽療法士1名(バイオリン奏者、福祉系の資格も所有)、看護師1名、ビデオ撮影者1名、療養者1名、療養者家族(妻)1名の合計5名がいたが、療養者は、ある特異な手拍子の方法を開発して参与していたようだった。つまり、バイオリン奏者が演奏している曲のメロディ部分に対応して、左右の手を擦り合わせて上下させる動作をしながら、手拍子を行っていた。まずは、このことを「在宅療養者のブリコラージュ(器用仕事、レヴィ=ストロースの用語)」の一例として報告したい。さらに以下の3点に言及したい。第一に,看護師の手拍子(西洋的リズム志向の手拍子)と療養者の手拍子(日本的拍子志向の手拍子)に「相互引き込み関係」が成立しているかどうか(cf. 山本知仁・三宅美博,2002).第二に,もし,看護師と療養者が違った「拍イメージ」を志向して手拍子を打っていた場合,その複雑な相互行為を我々はどのように記述すればよいのか.そして,第三に,全体として,「音楽療法のビデオ・エスノグラフィー」という研究プロジェクトを十全に進めるためには,どのような課題編成と研究手法で行って行けばよいのか.この3点である.分析は途上であるが,とにかくデータの豊かさだけは示していきたい。