エスノメソドロジー・会話分析研究会: 2009年度春の例会・短信

2009年度 春の研究大会が、2010年3月26日に成城大学にて開催されました。当日は平日にもかかわらず30余名の参加者を迎え、盛況のうちに閉会しました。参加者から、当日の報告について振りかえっていただきました。 (EMCA研究会ニュースレターから抜粋掲載しています。詳しい内容については会員用のニュースレターでご覧ください。(編集 是永))

内容の詳細は→活動の記録(2009年度)をご覧ください。

短信

【午前の部】研究報告(日本語/英語)

中山和彦さん

今回の報告は、医療におけるインフォームド・コンセント(以下、IC)の一考察でした。医師-患者関係は、患者の身体と医療知識の情報交換というコミュニケーションによって成り立っています。今日の医師-患者関係をより良くしていくためには、ICが重要となってきます。ICは、重要な医療行為について、患者の意思を尊重して決定していく事を法的に規定したものです。そこで、法的規定が医療におけるコミュニケーションを円滑にし、十全な情報提供に基づく医療行為の決定の一助になっているかについて、経験的検討が必要になってきます。本研究では、ALS(筋萎縮性側索硬化症)をめぐる、4例の医師患者関係事例を、患者/患者家族への聞き取りに基づいて理解し、医師と患者の円滑なコミュニケーションを実現するための条件を探究しました [..]

山田恵子さん

今回は,「法律相談における法的合理性の指示と共通リアリティの産出」というタイトルで報告をさせて頂きました。今日の法理論・法実務において,「法」と「心理」の緊張的関係をどのように把握するか,また両者の調整をいかにして達成するかという問いは,一つの主要な問題領域を形成しています。本報告は,法律相談過程において,法的権利・根拠でなく, 紛争相手方の「合理性/非合理性」の問題として定式化された会話連鎖を分析素材として, 法律相談という制度的場面において「法」と「心理」を相互に関連づけていく諸手続が,法的助言を一つの合理的な指示として受容する/させるという法律相談に固有の実践的目的に向けて,弁護士と相談者間で「共通リアリティ」を達成するために動員される資源であることを例証しようとするものでした [..]

小宮友根さん

春の研究大会では「法的推論と常識的知識」という題で報告をさせていただきました。刑事裁判において有罪や無罪、あるいは量刑が争われるときに、法的推論の中で常識的知識はどのように働いているだろうか、という問題は「エスノメソドロジー(以下EM)」という研究にその名前がつけられたときからのEM研究の関心事でした。法的推論をおこなうことは言うまでもなくきわめて専門性の高い実践ですが、他方で裁判の進行の中でそれが組み立てられていく過程には不可避に、かつ多様な仕方で、常識的知識が用いられており、一見些末に見えるそれらは、しかしときに判決に決定的な影響を与えることもあります。とりわけ日本では、裁判員制度が施行されて1年になり、「市民感覚」という名の常識を刑事裁判に持ち込むことについて、さまざまな議論が為されています。実際、判決の傾向はあきらかに変化している部分もあります。そうした変化を適切に評価するためには、制度の実施と結果の変化の関係をブラックボックスにするのではなく、裁判の内部で常識的知識がどのように働いているかというその詳細を検討することが不可欠になると考えています [..]

樫村志郎さん

今回の報告では、視野逆転眼鏡(inversion lenses)の実験を素材とした.仲の良い同僚,ゼミ生,セミナー出席者などを煩わせて,いくつかの場面の資料を収集し,また報告の直前には子供にも試させて報告の基礎とした.これらの人々のご厚意はまことにありがたく思う.また,多くの出席者の方から,(それなりに)面白かったという感想をいただき,力づけられた.感謝をもうしあげたい [..]

【午後の部】講演:マックス・トラバース

Max Travers氏から

Is the journey from Australia to a conference in Japan worth the effort? Well, aside from the fact that visiting Tokyo is always enjoyable if you like metropolitan life, I was pleased to meet a relatively large group of people with similar interests [..]

※近影は許可を頂いた方のみ掲載しております。