山崎敬一、2004、社会理論としてのエスノメソドロジー

目次と書誌

  • 2004年4月 発行
  • 定価 2600円+税
  • A5判/227頁
  • ISBN 4-938551-66-7
  • ハーベスト社 |

会話分析やコンピュータサイエンスなど、さまざまな分野に影響を与えてきたエスノメソドロジーとはどのような社会理論なのかを考察。また、社会学的なテーマにエスノメソドロジー的な視点から理論的に迫る。

序論
第1部 エスノメソドロジーと社会理論
  • 第1章 常識的カテゴリーと科学的カテゴリー──シュッツとエスノメソドロジー
  • 第2章 主体主義の彼方に──エスノメソドロジーとは何か
  • 第3章 ガーフィンケルとエスノメソドロジー的関心──リフレクシビティーと社会的組織化の問題
  • 第4章 社会的行為における意味と規則
第2部 成員のカテゴリー化の問題
  • 第5章 人間のカテゴリー化について──「私」の社会的コンテクスト
  • 第6章 場面の組織化とカテゴリーの組織化──差別のエスノメソドロジー
  • 第7章 性別カテゴリーのエスノメソドロジー──虚構としての男と女
  • 第8章 言語と社会関係のダイナミックス
補論1 いかにして理解できるのか──「意味と社会システム」再考
補論2 「知識と理解」

本書から:「序論」

この論考は、社会理論としてのエスノメソドロジーについて考察を行ったものである。『社会理論としてのエスノメソドロジー』という形でこの論考をまとめたのには、三つの理由がある。その三つの理由が、またこの社会理論としてのエスノメソドロジーという論考の意義にもなると思われるので、それについてまず述べておきたい。

エスノメソドロジーは、ハロルド・ガーフィンケルが ethnomethodology ということばを「人々の(ethno)方法論(methodology)」と「人々の方法論の研究」という研究領域と研究対象を共に示すことばとして作って以来、さまざまな領域の研究に影響を与えてきた。

エスノメソドロジーにおいて、現在もっとも研究が盛んな分野は、ハーヴィー・サックスによって始められた会話分析の領域であろう。会話分析は、社会学だけでなく言語学にも大きな影響を与え、相互行為としてのことばや、相互行為と文法の関係を研究する方法として、社会学だけでなく言語学においても、もっとも標準的な方法となっている。

またコンピュータサイエンスの分野、特にコンピュータ支援の協同作業研究(CSCW)や、コンピュータ・ヒューマン・インタラクション(CHI)の分野でも、エスノメソドロジーは重要な研究手法となっている。

著者に聞く ── 一問一答

本書を書こうと思った動機やきっかけがあれば教えてください。 もともと『美貌の陥穽』(1994)のすぐあとにだすということで、ハーベスト社の小林さんに、いくつかの論文も渡していました。ただその後、CSCW(コンピュータ支援の協同作業)の英語の論文を出したり、海外(UCLA等)に足かけ2年間在外研究に行っていたりして、日本語で社会学の本を出すという意欲をしばらく失っていました。しかし、あるときに若い研究者たちが、当時3人以上の人は読んでいなかっただろう昔の論文を回し読んでいると聞いて、もう一度この課題に取り組んでみようと思いました。
構想・執筆期間はどれくらいですか? もう一度だそうと考えてからは、半年くらいだと思います。
これまで出された著書(あるいは論文)との関係を教えてください。 もともと 『美貌の陥穽』(1994)と対として出す予定のものでした。
執筆において特に影響を受けていると思う研究者(あるいは著作)は? サックスです。
社会学的(EMCA的でも可)にみて、本書の「売り」はなんだと思いますか? 社会理論としてのエスノメソドロジーという標題そのものです。
社会学者以外の方に特に読んで欲しい箇所はありますか? その理由は? 社会学者以外には、エスノメソドロジーや会話分析が社会学に起源を持っているということを、理解してほしいと思っています。
EMCAの初学者は、どこから読むのが分かりやすいと思いますか?また、読むときに参考になる本や、読む際の留意点があれば、教えてください。 第2章の議論を読むのがいいと思います。社会学が専門の人は、ホッブズ、デュルケム、ウェーバーを読んでいるといいのではないかと思います。
出版以降にどのような反響がありましたか?またすでに書評などが出ているようであれば、教えてください。 自著についての書評は基本的に読まないので全くわかりません。批判論文は読みますけれども。
本書の出版以降に取り組んでいるテーマについて教えてください。

いま取り組んでいるのは、介護ロボットと、ミュージアムロボットです。2007年9月に ECSCW 2007 で発表するKeiichi Yamazaki, Michie Kawshima, Yoshinori Kuno, Naonori Akiya, Matthew Burdelski, Akiko Yamazaki and Hideaki Kuzuoka, Prior-to-request and request behaviors within elderly daycare: Implications for developing service robots for use in multiparty settings という論文が、代表作になると思います。

CHI や CSCW といったところにたくさん英語の論文を書いていますが、残念ながら、エスノメソドロジー研究者を含めて、日本の社会学者で私の最近の英語の論文を読んでいる人はほとんどいないのではないでしょうか。もし読みたいと考えているいる人や、すでに著作のいくつかを読んでいる人がいたら、ご連絡ください。論文をお送りします。

あと、社会学原論や社会学入門の授業を行っているうちに、社会学理論の本をまた出したくなりました。(江原由美子、山崎敬一編 『ジェンダーと社会理論』 有斐閣も最近出ました)。関心のある出版社の方、ご連絡ください。